ところで、この三浦梅園は日本思想史の中でとてもユニークな存在であるために、他の思想家と の絡みで論じることがほとんど不可能な哲学者です。カントが英国経験論と大陸合理論との関係で 論じられているようには行きません。そのために、今まで多くの研究者が梅園の研究に悩まされま した。しかも、今までの研究者の多くが中国哲学や日本史の専門家であったのですが、彼らの得意とする文献学的アプ ローチが通用せず、ほとんど梅園は理解されずマイナーな思想家のまま今日に至っています。けれ ども、これはむしろ本当に哲学を志す人々にとっては幸運なところもあって、他の思想家との文献 学的な比較が通用しない分だけ自分の哲学センスを試すことが出来ます。無論、梅園の著作は難解 ですし、ある程度の予備知識がないと理解できませんが、何となくその中に魅力を感じることがで きれば哲学者としてのセンスがあるかも知れません。(だからといって別に何だ!?と言われると困 るのですが・・)
かくいう私もそんな中の一人です。実は、私は梅園に関して幾つか論文を書いていますけれども、 さほど梅園に詳しいわけではありません。ここでは取りあえず梅園を読むにあたって「哲学とはいか なるものか」を分かっていただけるために「哲学者としての三浦梅園−常識人のための哲学入門」ほか、梅園学会報などで発表した文章を 展示いたしました。これは梅園の哲学に対する入門書であると同時に、哲学一般の入門書 として書かれたものです。特に予備知識はいらないので、ゆっくりお読みください。書いたのは1993年頃です。
なお、三浦梅園自身によるその哲学の平易な解説書、『多賀墨卿君にこたふる書』の英訳を英語のページに置きましたので、関心のある方はこちらもご覧ください。解説は私の拙い英文によるものですが、訳はニュージーランド Massey University の Rosemary Marcer さんによるものです。 [ココをクリック]
*哲学者としての三浦梅園
(1)常識批判としての哲学
(2)哲学と宗教
(4)哲学と科学
(5)抽象と現実
(6)役に立つもの立たないもの
*梅園に関して私が書いた論文
梅園哲学の普遍性について
哲学の現場
*梅園資料館 開館記念講演 から
Rosemary Marcer さん 「天地を師とす」
北林達也さん 「電脳梅園学−インターネットの中の三浦梅園」@「三浦梅園研究所」
五郎丸延さん 「シンポジウム原稿/江戸出版文化史上における梅園」
岩田憲明
「哲学に対する2つの偏見から」