ブルルル・・・・・・
プロペラの音が聞こえている。
その老人は暗い機内にひとり横たえられていた。そこに他に人はなく、時々揺れるカーテンの隙間から漏れる陽の光だけが外界の存在を告げていた。
「離陸します。ベルトはよろしいですね。」仕切りの向こうから女の人の声がする。
ブルルルルル
プロペラの音が急に高くなり、飛行機が動き出す。次の瞬間、老人の身体に離陸の圧力が加わった。老人は少しの間その力に押し潰されそうになったが、すぐにそれから解放された。プロペラの音が軽くなり、飛行機はもう大空を飛んでいた。
オープニングテーマ:谷山浩子「お昼寝宮・お散歩宮」より「お昼寝宮・お散歩宮」