ラマダーンの断食(斎戒)
法=義務(ワージブ)
يَا أَيُّهَا الَّذِينَ آمَنُواْ كُتِبَ عَلَيْكُمُ الصِّيَامُ كَمَا كُتِبَ عَلَى الَّذِينَ مِن قَبْلِكُمْ لَعَلَّكُمْ تَتَّقُونَ 
 雌牛章183((信仰する者よ,あなたがた以前の者に定められたようにあなたがたにが定められた。恐らくあなたがたは主を畏れるであろう。 ))
شَهْرُ رَمَضَانَ الَّذِيَ أُنزِلَ فِيهِ الْقُرْآنُ هُدًى لِّلنَّاسِ وَبَيِّنَاتٍ مِّنَ الْهُدَى وَالْفُرْقَانِ فَمَن شَهِدَ مِنكُمُ الشَّهْرَ فَلْيَصُمْهُ 
   雌牛章185(( ラマダーンの月こそは,人類の導きとして,また導きと(正邪の)識別の明証としてクルアーンが下された月である。それであなたがたの中,この月(家に)いる者は,この月中,斎戒しなければならない。))
   ハディース((イスラームは5つ事柄の上に成り立つ。アッラー以外に神はなく、ムハンマドはアッラーの使者であると告白すること、礼拝に立つこと、ザカートを出すこと、ラマダーン月の斎戒、巡礼することである。))
 
  ハディース((ある男が預言者に質問した。「アッラーのみ使いよ、断食で私に義務とされているのは何ですか?」預言者は言った。「ラマダーン月の断食です。」「それ以外に何かありますか?」「いいえ、ありません。ただ随意の断食があるのみです。」と。))
いつから義務とされたか?
 ヘジラ2年のシャーバーン月2日目に義務とされた。
ラマダーン月の特典
 ハディース((ラマダーンになったときに預言者は申された。「あなたがたに祝福された月がやってきました。アッラーは、その月の断食を義務とされました。その月には、天国の戸が開き、地獄の戸が閉じられます。サタンは縛られ、また、千夜にも勝る夜があります。))
 ハディース((5回の礼拝の間、金曜日から金曜日の間、ラマダーンからラマダーンの間、大きな罪を行わない限りその間の罪は許される。))
いつから断食は始まるか?
 ラマダーンの新月を一人でも見たとき、または、シャアバーン月を30日まで完了したとき。
 説明:断食の始まりは、シャアバーンの29日の日没後、ラマダーンの新月を一人でも肉眼で見れば、その瞬間からラマダーン月となる。もしも、見えなければシャアバーン月は30日までとなり、その次の日のマグリブからラマダーン月となる。イスラムの月の日数は、29日または30日であって、31日になることはないからである。
断食に必要なことがら
1、ファジュル(曙)からマグリブ(日没)まで、飲食喫煙などを控えること。
2、意思表明(ニーヤ)をすること。
 وَكُلُواْ وَاشْرَبُواْ حَتَّى يَتَبَيَّنَ لَكُمُ الْخَيْطُ الأَبْيَضُ مِنَ الْخَيْطِ الأَسْوَدِ مِنَ الْفَجْرِ ثُمَّ أَتِمُّواْ الصِّيَامَ إِلَى الَّليْلِ
 雌牛章187((また自糸と黒糸の見分けられる黎明になるまで食べて飲め。その後は日暮れまでを全うしなさい。))
 ハディースに、白糸と黒糸の解釈は、昼の明るさと夜の闇とのべており、その境となるファジュルが断食の始まる時刻ということになる。しかし、一部の地域では、イムサークという時刻をファジュルの約30分前に置き、ファジュルの前に念のために断食に突入することもある。どちらを採用してもよい。
断食が義務となる者の条件。
・ムスリム
・正常な精神
・成人
・健康
・在住
・月経でないこと
・産後の出血がないこと。

これに当てはまらないものに断食の義務はない。つまり、カーフィル、精神異常者、子供、病気、旅行、月経中の女性、産後の出血中の女性。さらに、断食をする力がない老人、妊婦、授乳中の母親も断食の義務がない。
子供の断食
子供は断食の義務は負わされないが、断食を行うだけの力があるならば、教育を目的としてさせることはいいことである。
断食を免除される人たち
老人、老婆、回復の見込みの少ない病人、生活のために年中重労働を余儀なくされている者、これらのものについては断食は免除される。しかし、毎日一人の貧乏人に食事を与えなければならない(以降、『貧者への給養』と呼ぼう)。
 ハディース((老人には、食事をとり、毎日一人の貧乏人に食事を与えること(貧者への給養)が許される。カダーはない。))
 
 أَيَّامًا مَّعْدُودَاتٍ فَمَن كَانَ مِنكُم مَّرِيضًا أَوْ عَلَى سَفَرٍ فَعِدَّةٌ مِّنْ أَيَّامٍ أُخَرَ وَعَلَى الَّذِينَ يُطِيقُونَهُ فِدْيَةٌ طَعَامُ مِسْكِينٍ
 雌牛章184 (((斎戒は)定められた日数である。だがあなたがたのうち病人,または旅路にあるは,後の日に(同じ)日数を(斎戒)すればよい。それに耐え難いの償いは,貧者への給養である。))
 説明:老人、老婆に関してはハディースで述べているように許されている。上のコーランが述べる『それに耐え難い者』とは、この老人・老婆が代表的であるが、それ以外に老人・老婆と同じ状況のものにも当てはまるといえる。
 病人で回復のる見込みのない者、重労働を常時する者たとえば炭鉱労働者。これらの者も、断食を免除されることになる。後にカダーをすることも難しい状況なので、カダーも免れ、その代わりに、一日あたり一人の貧者を給養すればよい。

 ★シェイフ=ムハンマド=アブドゥが言うには、このアーヤでいう『耐え難い者』とは、老人、弱者、回復の見込みの少ない病人、炭鉱労働者のように重労働を常とし断食をすることが負担になる者のことである。さらに、長期間強制労働に服役している受刑者もある。
 また、妊婦と授乳する母については、もしも自分自身への影響が心配か又は子供への影響が心配な場合は、断食をしない。そしてフィディヤ(貧者への給養)を出し、カダーはしない。
 ★(妊婦と授乳する母に関して)ハナフィー派においては、カダーをし、貧者への給養はない。
 ★ハンバリー派とシャフィイー派において:子供への影響が心配な場合は、カダーと貧者への給養とも行わなければならない。また、自分自身への影響または自分自身と子供双方への影響が心配な場合は、カダーを行うのみである。

 ●治る見込みのある病人と旅行者に関しては、カダーをしなければならない。
第2章雌牛章185((病気にかかっている者,または旅路にある者は,後の日に,同じ日数を(斎戒する)。))

 ●健康だが断食をすることにより病気となる恐れがあると判断して斎戒を止めた者、空腹または喉の渇きに絶えれず斎戒を止めた者については、カダーをしなければならない。
第4章婦人章29((またあなたがた自身を,し(たり害し)てはならない。誠にアッラーはあなたがたに慈悲深くあられる。 ))

●病人が無理を押して斎戒をしても、斎戒は合法である。しかし、アッラーが許している特権を放棄し、病状が悪化するのなら、マクローフである。

●旅行者:預言者の時代、教友たちの半分は斎戒を行い、残りの半分は斎戒を行わなかった。それは預言者のファトゥワーによるものだった。ハムザトル アスラミーが言った。「アッラーのみ使いよ、私は、旅行で斎戒をするだけの力はあります。それで私に問題はありますか?」そこでみ使いはおっしゃった。「それは、アッラーからの免除です。それを採用するならばそれで良く、また、斎戒をしたければ、それでも問題はありません。」
 サイードル フダリーの伝承から、彼は言った。((私たちはアッラーのみ使いと共にラマダーンに戦場に赴いた。一部のものは斎戒をし、残りのものは斎戒はしてなかった。ただ、斎戒している者がしてない者よりも優れているとか、斎戒をしてない者がしている者より優れているということはなかった。力のあるものが斎戒をし、それを良しとし、また、少し弱そうな者は斎戒をせず、それもまた良しとしていた。))

 これに関して法学派によって解釈が別れている。
 ハナフィー、シャフィイー、マーリキ各派では、力のある者は斎戒をすることを良しとし、力の足りない者は斎戒をしないことを良しとする。
 ハンバリー派では、斎戒しないことを良しとする。

●斎戒をしてはいけない者
 月経中の女性と産後の出血中の女性は、斎戒をしてはいけないということで全てのウラマーは合意している。斎戒をすることはハラームであり、斎戒をしても無効である。
 後日カダーを行わなければならない。アーイシャが言った。「アッラーのみ使いの時代、月経をしていた私たちに、斎戒のカダーを命じたが、礼拝のカダーを命じなかった。」
これはSayyid Sabiq著『Fiqh as-sunnah』の斎戒章の中から抜粋して翻訳したものです。