サラート・礼拝

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礼拝の捧げ方
 さて、ウドゥー等により清浄な状態となり、イカーマを唱えた信者は、いよいよ礼拝 に入ります。礼拝を捧げる際、唱える文句はすべてアラビア語を用います。しかし、当初からこれらすべての文句をおぼえてしまうことは無理なので、入信して日の浅い 人は,スブハーナッ=ラー、スブハーナッ=ラーと、繰り返し口の中で唱えればよいのです(同時にファーティハ章の意味を念じることが良い)。そして礼拝が終るまで は、アッラーとの対話に専念し、体を動かしたり雑念に惑わされないようにします(ただし、雑念が起きても,礼拝が無効になるわけではありません)。

礼拝の各動作と唱える文意に精神を集中することが大切です。礼拝は次の順序で捧げ ます。

 @正しくキブラ(メッカの方角)に向って立ち、自然の姿勢で手は体の両側にたれ、 両足には適当な間隔をおきます。その際,眼は座礼の時に額のつく地点を注視します。なお、キブラの方角がわからないような場合は、自分の想像するキブラに向って礼 拝すればいいのです。

Aニーヤ(意志表明)として「アッラーを称えて、何の礼拝を何ラカート(礼拝単位) します」と唱えます。

Bそれからタクビール、すなわちアッラーフ アクバル(<意味>アッラーは偉大である。)を唱えながら、両手を耳のところまで上げて、へその高さま で降ろし左手を下にして、右手の拇指と小指で左手首を握る形で両手を重ねます。婦人の場合は、手を肩まで上げてから胸の前に同様に右腕を上にして重ねます。この直 立の姿勢をキヤームといいます。なお、両手を耳のところまで上げる動作はアッラーに完全な服従を表明することを意味しています。

Cキヤームの姿勢になったらすぐ、次のように口の中で唱えます。
 (イ)スブハーナカッ=ラーフンマ ワビ・ハムディカ
 (ロ)ワタバーラカ=スムカ ワタアーラー ジャッドゥカ
 (ハ)ワ ラー イラーハ ガイルカ
<意味>
 (イ)おおアッラー、あなたを讃美し敬いたてまつる。
 (ロ)祝福はあなたのみ名であり、あなたは高貴のきわみであられます。
 (ハ)あなたの他に礼拝に価いするものはありません。

続いて次の文句を口の中で唱えます。

アウーズ ビッ=ラーヒ ミナッ=シャイターニル=ラジーム
<意味>
呪うべき悪魔にたいし、アッラーのお守りを祈りたてまつる。

ビスミッ=ラーヒッ=ラフマーニッ=ラヒーム
<意味>
仁慈あまねく慈悲深き、アッラーのみ名によって。

Dそれから、開端章(スーラト=ル=ファーティハ)を唱えます。

E引き続いてクルアーンの中の三節以上よりなる旬を唱えます。ただし、長い節の場 合は一節だけでも構いません。たとえば第112章(純正章)を唱えるのがいいでしょう。

F続いてタクビール(アッラーフ アクバル)を唱えながら立礼(ルクーウ)を一回 します。その時、ひざ頭をつかむ形で腕や足を伸ばし、頭から首、背筋をまっすぐにして眼は足もとを注視し、次のように口の中で三回唱えます。

スブハーナ ラッビヤ=ル=アジーム
<意味>
偉大なるわが主の栄光をたたえ奉る。

Gそれからサミアッ=ラーフ リ・マン ハミダ
<意味>
アッラーは、たたえる者に、よろこび応えたもう。と唱えながら直立の姿勢に戻り、 ただちに次の句を唱えます。

ラッバナ ラカ=ル=ハムド
<意味>
私たちの主、あなたをたたえ奉る。

H続いてタクビール(アッラーフ アクバル)を唱えながら平伏叩頭(サジダ)の姿 勢に入り、次の文句を口の中で三回唱えます。

スブハーナ ラッビヤ=ル=アアラー
<意味>
荘厳崇高なわが主の栄光をたたえ奉る。

アッラーに対する人間の敬意を表わす最良の姿勢であるサジダに際しては。まずひざ 頭を床につけ、次いで五指を揃えてキブラに向けて両手をつき、それから鼻、額の順に床につけます。また、足の指も床についていなけれぱなりません。

Iそれからタクビール(アッラーフ アクバル)を唱えながらサジダの際と反対の順序で上体を起こし、座位になります。この姿勢をカアダといいます。そしてすぐに再びタクビールを唱えながら、二回目のサジダをHと同じ様に行い、Hの文句を三回唱 えます。

Jそしてタクビール(アッラーフ アクバル)を唱えながら再び身体を起こし、座位 に戻ります。

 以上の@〜Jまでが礼拝の一単位で、最初の直立の姿勢から一回の立礼と二回の座礼 で構成されています。これをラカートといいます。すなわちここまでで1ラカート終ったことになります。

K以上、第1ラカートを終えたなら、すぐタクビール(アッラーフ アクバル)とと もに立ち上って第2ラカートに移ります。同じように開端章を唱え、そのあと、第1ラカートで純正章を唱えましたから、今度は第113章(黎明章)を唱えます。第1ラカー トの時唱えたものよりもあとの章から選び、前の章に遡らないのが慣わしです。

Lそして第1ラカートと同じ様に一立礼と二座礼を捧げたならば、座位の姿勢のまま で、次の誓いを口の中で唱えます。これをタシャッフドといいます。

(イ)アッ=タヒーヤートリッ=ラーヒ ワッ=サラワート ワッ=タイイバード
(ロ)アッ=サラーム アライカ アイユハン=ナビーユ ワラフマトッ=ラーヒ  ワバラカートフ
(ハ)アッ=サラーム アライナー ワアラー イバーディッ=ラーヒッ=サーリヒ ーン
(ニ)アジュハド アッ ラー イラーハ イッラッ=ラーフ
(ホ)ワアシュハド アンナ ムハンマダン アブドゥフ ワラスールフ
<意味>
(イ)尊崇、礼讃、神聖のきわみのアッラーをたたえ奉る。
(ロ)おおみ使いよ、なんじに平安あれ、アッラーの恩恵と祝福あれ。
(ハ)私たちすべてのもの、アッラーの忠誠なしもべの上に平安あれ。
(ニ)私はアッラーのほかに仕えるに価いするもののないことを誓う。
(ホ)また私はムハンマドがアッラーのしもべであり、み使いであることを誓う。なお(ニ)の項で「イッラッ=ラーフ」を唱える時、右手の人指しゆびを前方に突き出し、神が唯一であることを証明します。

M義務の礼拝が2ラカートで終る時は、続いてPへ移りますが、3ラカート以上の時は 最初に戻ってタクビール(アッラーフ アクバル)を唱えて直立の姿勢に戻り、開端章を各自口の中で唱えます。第3ラカートからは他の章節は唱えません。そして前と同様に一立礼、二座礼を棒げて礼拝終了段階に移ります。

Nこうして定められたラカートを終えて、Lのタシャッフドを唱え終えた頂ら、次の句を続いて唱えます。
(イ)アッラーフンマ サッリ アラー ムハンマデイン ワアラー アーリ ムハ ンマディン
(ロ)カマー サッライタ アラー イブラーヒーマ ワアラー アーリ イブラー ヒーム
(ハ)インナカ ハミードゥン マジード
(ニ)アッラーフンマ バーリク アラー ムハンマディン ワアラー アーリ ム ハンマディン
(ホ)カマー バーラクタ アラー イブラーヒーマ ワアラー アーリ イブラー ヒーム
(ヘ)インナカ ハミードゥン マジード
<意味>
(イ)おおアッラーよ、ムハンマドとその後継者にあなたの恵みをたれたまえ。
(ロ)あなたがイブラーヒーム(アブラハム)とその後継者に恵みを賜うたように。
(ハ)げにあなたは讃美すべきこうごうしい方であられます。
(ニ)おおアッラー、ムハンマドとその後継者を加護したまえ。
(ホ)あなたがイブラーヒームとその後継者を加護したように。
(ヘ)げにあなたは讃美すべきこうごうしい方であられます。

O最後に、同胞のためにも平安と幸福がくるように祈ります。まず顔を右へ向けて、 アッサラーム・アライクム・ワラフマトッ=ラー
<意味>
あなた方に、平安とアッラーのお恵みあれ。と唱え、それから左の方に向いて同じ文 句を唱えて、礼拝を終ります。

P礼拝後、その場でアッラーを称えて唱念(ズィクル)し、それから祈願(ドゥアー )を捧げます。ドゥアーは両手のひらを上向きにして胸の前にあげます。ただしこのズィクル、ドゥアーは義務ではありません。

一日五回の礼拝とその時刻
 毎日の礼拝は、早朝の礼拝(ファジュル)、正午過ぎの礼拝(ズフル)、遅い午後の 礼拝(アスル)、日没後の礼拝(マグリブ)、そして夜の就寝前の礼拝(イシャーウ)の五つです。

●ファルドの礼拝
 この礼拝は教徒が絶対的義務として捧げなければならない礼拝です。
●スンナの礼拝
 これはみ使いムハンマドがファルドの礼拝の前または後に捧げていた礼拝で、一般に 厳修するのが慣わしです。
●ウィトルの礼拝
 この礼拝はファルドの礼拝に次ぐ重要なもので、イシャーウのスンナの礼拝の後に3 ラカート棒げます。ウィトルの礼拝では、第三番目のラカートが他の礼拝と異なります。すなわち、開端章を唱えた後、クルアーンの短い章節を唱え、直ちにアッラーフ・ア クバルを唱えながら手を耳のところまで上げて降ろし、キヤームの姿勢のまま次のドゥアーウ=ル=クヌートという祈りを口の中で唱えます。
(イ)アッラーフンマ インナー ナスタイーヌカ
(ロ)ワナスタグフィルカ
(ハ)ワヌウミヌ ビカ
(ニ)ワナタワッカル アライカ ワヌスニー アライカ=ル=ハイラ クッラフ
(ホ)ワナシュクルカ ワラー ナクフルカ
(ヘ)ワナフラウ ワナトルク マン ヤフジュルカ
(ト)アッラーフンマ イーヤーカ ナアブド ワラカ ヌサッリー ワナスジュド
(チ)ワイライカ ナスアー ワナフフィド
(リ)ワナルジュー ラフマタカ
(ヌ)ワナフシャー アザーバカ
(ル)インナ アザーバカ ビ=ル=クッファ一リ ムルヒク
<意味>
(イ)おおアッラーよ、私達はあなたのご加護を講い、
(ロ)あなたのお許しを願います。
(ハ)また、あなたを信じ、
(ニ)あなたに帰依します。私達は最上の儀式であなたを讃え、
(ホ)あなたに感謝し、あなたのご恩は忘れません。
(ヘ)またあなたに従わぬものと絶交して見捨てます。
(ト)おおアッラーよ。あなたにのみ私達は仕え、あなたに祈りまた服従します。
(チ)私たちは急いであなたのもとに参じ精進します。
(リ)私たちは、あなたのお恵みを歎願し、
(ヌ)あなたの懲罰を恐れます。
(ル)まことにあなたの懲罰は不信者に対して下ります。

 その後は、他のサラートと同様、ルクーウ、サジダをしてウィトルの礼拝を終ります。
●ナフルの礼拝
 この礼拝は捧げることが望ましい、自由な随意の礼拝です。
●カダーの礼拝
 理由なく義務の礼拝を怠ることは大きな罪になります。しかし、定められた時間内に 礼拝することができなかった場合は、次の礼拝の前になるべく早く、怠った義務の礼拝を捧げなければなりません。

「何の礼拝のカダーの礼拝をします」とニヤ(意志表明)を行い、あとはいつもと同 じ方法で定められたラカートを終了します。

金曜日(ジュムア)の礼拝
 毎週金曜日には、ムスリムはマスジド(礼拝堂)に集まり、イマームの指導のもとに 昼の礼拝を捧げます(これはズフルの礼拝の代りになります)。

 アザーンが唱えられ、各自がスンナの礼拝を終ると、イマームはミンバル(説教壇) にのぼりフトバ(説教)をします。フトバは二つの部分に別れ、前段ではアッラーを讃美し、イスラームの教えについて述べます。後段ではみ使いムハンマド(かれに平 安あれ)と、その教友及び殉教者達のために祈ります。フトバの一部はアラビア語でなければなりませんが、その他の部分は礼拝者に分かり易い言語でなされることが望 ましいのです。

 それからファルド(義務)の礼拝2ラカートを捧げます。金曜日の礼拝は、近隣に住 むムスリムたちが一同に集まって厳修するものですが、互いに健康を祝い合い、信心をねり、親交をあたため合う時でもあるのです。
 特に男性はこの礼拝に参加しなければなりませんが、女性の場合は必ずしも参加しな くてもよいのです。

その他の特殊な礼拝
ジャナーザ(葬儀)の礼拝
 死後の魂の復活を信ずるイスラームでは、死体には沐浴を施し、それを白布に包み、 顔をキブラ(メッカの方角)に向けて埋葬します。

 葬儀は普通、キブラの方角に位置した棺の前にイマームが立ち、会葬者はその後に並 びます。
 ふだんの礼拝と同じようにウドゥーをすませ、イマームの先導により礼拝に入ります 。ジャナーザの礼拝には立礼や座礼はなく、人々は直立の姿勢で祈りを捧げるのです。

@まずニーヤ(意志表明)を行います。
「私は葬礼のタクビールをアッラーに捧げます、アッラーを讃美し奉り、み使いに対 する恩恵を祈り、また故人に対するお許しを祈願いたします。私は顔をキブラに向けます。」

Aそれからタクビールをして、両手を耳まで上げてへその高さで組み、次の様に唱え ます。
 スブハーナカッ=ラーフンマ ワビハムディカ ワタバーラカ=スムカ ワタアーラ ー ジャットゥカ ワラー イラーハ ガイルカ
<意味>
 おおアッラー、あなたを讃美し敬いたてまつる。祝福はあなたのみ名であり、あなた は高貴のきわみであられます。あなたの他に礼拝に価いするものはありません。

B次いで、イマームの二回目のタクビール(手は、耳のところまで挙げません−以下同じ)の後、「礼拝の捧げ方」の項のNの言葉を唱えます。

Cそれから三回目のイマームのタクビールに続いて、死者が成人の場合は次のような ドゥアーを捧げます。
 (イ)アッラーフンマ=グフィル リー ハイナー ワマイイティナー ワシャーヒ ディナー ワガーイビナー ワサギーリナ ワカビーリナー ワザカリナー ワウンサーナ
 (ロ)アッラーフンマ マン アフヤイタフ ミンナー ファイワイヒ アラ=ル= イスラーム ワマン タワッファイタフ ミンナー ファタワッファーフ アラ=ル=イーマーン
<意味>
 (イ)おおアッラーよ、許したまえ。私達の生けるもの、私達の死んだもの、ここに いる者またいない者、老いも若きも、女も男も。
 (ロ)おおアッラーよ。あなたが生を授けられた者がイスラームにのっとって生き、 あなたが死を与えられた者が信仰を抱いたまま死ぬよう御配慮下さいますよう。

Dそれから四番目のタクビールの声に、一同右側を向いてアッサラーム・アライクム ・ワラフマトッ=ラーを唱え、次に左側を向いて同じ様に唱え・葬礼は終ります。なお、イスラームでは火葬が禁じられており、ムスリムの死体はそのまますみやかに 墓に埋葬されるべきなのです。

イード=ル=フィトル(断食あけ)の礼拝
 ラマダーンの終った日の次の日が、イード=ル=フィトルで、30日間に亘る長い斎戒 を完全に果せたことをアッラーに感謝し、全世界のムスリムが祝うイスラームの大きな祝日です。
 この日、定められた時刻に、ムスリムたちはもよりの礼拝堂か、または広い場所に集 まり、整列します。そしてイマームの指導のもとに、(イ)ニーヤをし、(ロ)タクビール(アッラーフ アクバル)を唱え、それからキヤームの姿勢で従います。次にイ マームは、(ハ)3度タクビールを唱えます。この際、各自最初のタクビールでは両手を耳のところまで上げてからへその高さまで降して組み、「礼拝の捧げ方」のCに ある「スブハーナカッ=ラーフンマ…」を唱えます。2回目、3回目のタクビールの時は手をへその高さに組まず、脚の両側に自然に垂れます。そして、(ニ)4番目のタ クビールの時、手を再びへその高さで重ねます。それからイマームがファーティハ(開端章)を、次いで他の章節を朗誦し、いつものようにルクーウとサジダをして第1のラカートを終ります。
 第2のラカートは、第1ラカートの時と違い、イマームがファーティハと他の章節を唱 えた後に、タクビールを3回唱え、それに従って各自両手を耳のところまで上げ、そのつど体の両側に垂れます。そして4番目のタクビールの時、今度は手を耳まで上げ ず、すぐにルクーウに移ります。あとはいつもの礼拝と同様、アッサラーム・アライクムと唱えて礼拝を終ります。
 ジュムアの礼拝の時とは違って、この場合は礼拝が終ってからイマームがミンバル( 説教壇)に上り、2つのフトバ(説教)を述べて散会します。
 この日、すべてのムスリムは、新調した衣服か、所持しているものの中で最上の衣服 を身につけるのが慣わしで、途中で会う知人に対し、それぞれの国の習慣に従って、握手、抱擁、キスをして挨拶をかわし、また知人の家庭を訪問して喜びを伝え、イスラームで許される範囲内の方法で、祝いと歓楽に時を過ごすのです。

タラウィーの礼拝
 タラウィーの礼拝は、ラマダーン月の斎戒中に毎晩イシャーウの礼拝後20ラカート棒 げるものです。
 クルアーンの一巻を短かく分けて20ラカートのうちに読唱し、2ラカートごとにサラ ームを唱えて一段節とします。そして、ラマダーンの30日間にクルアーンの全30巻を読唱して、タラウィーの礼拝が終了するのです。

特別の事情における礼拝
@病床にある場合
 病状の許す限り床に座って礼拝し、それができない場合は、寝たままで礼拝してよい ことになっています。座って礼拝する時の立礼の動作は、額を床につけぬことによって座礼と区別します。また寝たままで礼拝する時は、単に心の中で、起立(キヤーム )、立礼(ルクーウ)、叩頭(サジダ)などを念じて、各々に関係する文句を唱えるだけでよいのです。

A旅行中の場合
 自分の家から80キロ以上離れた所に旅した場合(注:法学派により旅行の定義が違います)は、4ラカートの義務の礼拝は、すべ て2ラカートになります。但し3ラカートの義務の礼拝はそのままです。またスンナの礼拝はしなくてもよいことになっています。目的地に着いてからも、その地に15日以上滞在する意志がない時は、2ラカートの礼拝でよいとされています。

B正規の礼拝が不可能な場合
 身に危険が追っている時、満員の乗物の中等、避けることのできない情況にあって、 事実上きまった礼拝を捧げることが不可能の場合は、立ったままか座ったままで2ラカートの礼拝を捧げることによって、義務の礼拝に代えることができます。

C礼拝に遅刻した場合
 集礼または義務の礼拝に遅刻した時は、ただちに列の端に参列してそのまま皆と同じ 礼拝を捧げます。そして皆がサラームをする段になったら、遅刻した者はサラームをせずに立ち上がり、遅刻したために捧げることができなかった分だけの礼拝を補い 、いつものように礼拝を終ります。
 ここで「遅刻」という意味は、あるラカートのルクーウ(立礼)に問に合わなかった ということで、ルクーウ以前に礼拝に参加した場合は、そのラカートを補う必要はないのです。

D礼拝中に誤りを犯した場合
 礼拝を捧げている間に何か誤りを犯した時は、そのまま最後まで礼拝を続け、タシャ ッフドの後、右に顔を向けて一度サラームし、すぐに2回サジダをすれば、許しを願ったことになります。その上で、いつものようにタシャッフド、右左のサラームをし て礼拝を終ります。
 ただし、次のような行為があった時は、もう一度礼拝をやり直さなけれぱなりません。
(イ)礼拝中に話したり、礼拝の動作とは関係のない行動をとった場合。
(ロ)歩いたり、飲食したりした場合。
(ハ)顔がキブラの方角からそれた時(乗物の中は例外)。
(ニ)大声を上げて笑った場合。

礼拝上の諸注意
@礼拝を捧げてはならない時刻。
(イ)太陽が地平線にかかった時、真上にある時、及び没する時。また、ナフル(随 意)の礼拝は、次のような時には捧げることが出来ません。
(ロ)ファジュルの礼拝と日の出の間、またアスルの礼拝とマグリブの礼拝の間。
(ハ)マスジドで、イカーマが唱えられてから集礼までの間。
(ニ)金曜日の集礼におけるフトバ(説教)の最中、及びフトバを終ってイマームが 集礼の指導に移るまでの間。ただし、フトバの前に礼拝に立っていた場合は、中止することなくそのままそれを完了します。
(ホ)イード=ル=フィトル(断食あけ)の日におけるファジュルの礼拝とイードの 礼拝の間、及びその後でも現にイードの礼拝が行なわれている場所。
(ヘ)マスジドでの集礼を始める時が迫っていて、もはや時間に余裕がない時。

Aどんな場合でも、礼拝中の人の前を横切ることは、他の人の礼拝を損うことになり 、罪を犯すことになるので厳禁されています。もしその必要がある時は、まっすぐ自分の後ろに向って最後尾までさがり、それから目的の場所へ行きます。しかし、礼拝 はなるべく前方の・人が横切る必要のない所で捧げるのが望ましいのです。

B夫婦以外は男女が一緒に並んで礼拝を捧げることはできません。また、女性は生理 期間中は礼拝をしないことになっています。

C日々の礼拝は、なるべく集団で捧げるのがよいとされています。この際、礼拝する 者が二人しかいない時は、一人がイマームとして立ち、もう一人は彼のすぐ右側に足一つ分後方にさがって立ちます。三人以上いる時は、イマーム以外の人は皆その後方 に横一列に並ぶのです。女性は男性の後方に横一列に並んで礼拝を捧げます。

Dナフル(随意)の礼拝
(イ)タハジユードの礼拝は深夜から黎明にかけて捧げるナフルの礼拝で、4ラカー トないし12ラカート棒げることが特に推奨されています。預言者ムハンマドも数時間にわたり、常にこの礼拝を行われたもので、そのために彼の足はむくんでいたと伝え られています。
 万物が寝静まっている深夜、ひとり起きてアッラーの前にひれ伏ことによって、他で は到底味わえぬものを体得することができます。ただし、これは義務の礼拝ではありません。
(ロ)タヒヤト=ル=マスジドの礼拝は、マスジドに入った時に捧げるもので、通常 2ラカート捧げます。
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